1984.1.6 新しい明日41号より転載
☆全国最初の要約筆記テキスト

『要約筆記入門』


名古屋市要約筆記等研究連絡会「まごのて」編集
1983.10月初版発行


 要約筆記サークル「まごのて」は新しい明日39号1983年6月号)に紹介されているとおり、名古屋市域を中心に素晴らしい活動をくりびろげて来られたサークルである。
 この本は要約筆記をこれからはじめようとする人達の参考書として、多くの人に読んでもらえることを願い、「まごのて」の五年にわたる活動のすべてを結集して編集された。 (序文より)

 要約筆記者養成講座が各地で開催されるようになり、この経験の積みかさねの中で、カリキュラムもほぼ一定の型が出来あがって来ているがこの本でも、難聴講座でとりあげられているように、幅広い分野にまたがって、解説や問題の提起が行われている。

 第一章 聴覚障害者間題の理解のために
 第二章 聞えの仕組み
 第三章 要約筆記について
 第四章 難聴者の声、要約筆記者の声
 第五章 文献

 5章からなりたっているが、やさしい本である。やさしいというのは、読みやすいという意味であり、又行間のあらゆるところに、要約筆記者の人間としての優しさがあぷれている。すぐれた特別な人が書いた本ではなく、「まごのて」の全ての人がこの本の発行にかかわられたということも素晴らしい。気どりや勿体ぶった文章、誇張や遜ったところもない。実践にうらづけられた豊富な具体例が読む人に対して強い説得力を与えるのではないだろうかと思う。

 私自身難聴者でありながらこの本を読んでみて、難聴者自身の問題についても、不充分な点があったことをあらためて思い知らされている。

 第五章「要約筆記について」で助手者の役割の重要性が記述されている。どうしても筆記が遅れてはならない時、例えば難聴者の発言や意志表示の機会を失わせない為に遅れている筆記をとばして、次の司会者の言葉を書く場合、助手者が直ちに遅れている部分を書いて補足ずる役割等は気づきにくい技術である。理想的な要筆を行うためには助手者とのチームワ一クがかなり大事だということ等もあらためて教えられた一つである。

 この本は入門どかかれているだけに、大変説みやすく、努力をしなくても読める。しかし書かれている内容は現在の要約筆記の到達点であり、要約筆記のベテランが読まれた場合も非常に参考になる内容である。

 難聴にかかわるあらゆる人達、難聴者は勿論、家族や、福祉行政にたずさわる人達にも読んでいただきたいものと思う。

 実費で頒布されることになっているので、申込先、代金等については直接「まごのて」宛おといあわせ願いたい。
(文責 山口武彦)